広葉樹の種類

  • 2018.04.16 Monday
  • 10:18
八戸市森林組合で植林する広葉樹の種類として、様々ありますが苗木屋の都合によって樹種の選びがはじまります。

 特に大事にしているのは苗木の大きさ、高さ。1.2mぐらいがお気に入りですが。1mでも良い。それ以下だと成長が遅かったり、草刈り時に苗木が見えなくなってしまいます。

 樹種の選択のうち、あまりこの周辺の林業用苗木を生産している業者にありませんが、この周辺で見たことが無いような樹種は基本的に植えません。気候や土壌を加味して、この地域で見られる樹種を選定します。過去にはイヌエンジュも植えましたが、成長の悪さと前記の理由から植えておりません。

 最初に良く植えられたのはケヤキの植林(単層林)
 ケヤキは10年以上前はそれなりの値段で売れていたので積極的に植えておりました。しかしながら樹冠が扇状になりやすい事から、早い時期からの枝打が必要です。これを楽に矯正するためにケヤキ・スギの混交を私の先輩が行いましたが、結局は枝打をしたりしなければまっすぐに成長しません。haで3000本は少ないようで、もっといっぱい植えるか、広葉樹を伐採した後に植えた方が良いようです。どちらにしろ、枝をコントロールするのはとても大変です。

 サクラは成長が早いので比較的好きな樹種です。薪にしてもよし、チップにしてもよし、燻製用のチップもよし、花も咲くのでよしと植林するには理由がいっぱいある木です。ちなみに苗木屋さん次第ですが、こちらに生えているカスミザクラかほとんど生えていないオオヤマザクラになります。カスミザクラはヤマザクラとほとんど変わりませんので、全国的にはあんな木だと思って頂ければいいかと思います。ちなみにオオヤマザクラはベニザクラと言われるだけあって花が赤いです。ただしやや成長が劣る気がしますし、大きく成長できないかと思います。

 クリは人工造林する木として優秀です。もともと岩手県を中心に枕木としてかなり需要があったとの事ですが、今でも人気があります。土台に好まれます。三内丸山遺跡で大きなクリ材が使われていたようですが、八戸周辺でもバイタリティーにあふれた感じで、雑木林で良く見ます。但し、伸びのあるクリは少ないです。クリのすごい所は末口がある程度の大きさから2cm刻みで金額が上がります。それだけ太い木が少ないようです。八戸市森林組合ではカラマツと混交することが多かったです。また成長が早いので枝打が遅れる傾向があります。枯れ枝を除去すれば良い材が取れるかと思います。あと、上に伸びる特徴があるので、ケヤキの様に枝のコントロールがいらない点は大助かりです。

 ナラはやはり雑木の王さまです。八戸周辺にはコナラ、ミズナラがあります。主にコナラが多いようです。コナラはシイタケの原木として、薪やチップとして使用されます。太平洋の乾燥して、山火事に強い事からコナラの方が優勢になると聞いております。ボウ芽更新も容易で二次林でもっとも主役な木です。昔、バタフライフォレストリーを作ろうと思ったのですが、結局ナラにも多く寄る事が分かり、特定の樹種だけでは難しい事を考えさせられました。植林としては初期成長がやや遅れるものの、根が付けばどんどん成長します。10年ぐらいで一度伐採しボウ芽更新させれば3倍以上に幹が増えるし、成長が早くなります。シイタケの原木山になったら、中途半端な杉山よりももうかります。しかし重要な部分として、ネズミ対策が必要です。当組合では殺鼠剤を使用します。しかしながら死んだネズミを捕食者が食べて死ぬのは本望ではありませんので、巣に持ち帰って死ぬようなやや効き目が遅いZP1を使います。1反で800円ぐらいでしょうか?これを使用しないと毎年20%ぐらい根をネズミにかじられて死んでしまいます。
 ミズナラは家具等に使います。大きくなる木で寿命も長いです。シイタケの原木になりますが、小ぶりで多く取れると言われており、あまり植える人は少ないです。奥山の木のイメージです。こちらはコナラと異なり、ネズミに食べられません。昔、ドングリを食べていた時の文献をみると、コナラは美味しいけど、実が小さく集めるのが大変。ミズナラは量は集められるけど、美味しくないと書いてありました。灰汁が強いのかもしれませんね。

 ハンノキはこちらで非常に生えやすい木です。先駆樹種の代表的樹種で、コバハンノキの名前です。ニセアカシア、アカマツ、ハンノキは土壌をかく乱するとすぐに生えます。特に水分のあるところではハンノキはこれらの中では生えやすいです。田んぼの跡地に良く出現します。と思えば乾燥した所も行けます。砕石地にもも段切りしたところに生えます。これは根粒菌を持っているので肥料木とも言われ、窒素固定に役立ちます。成長が早い分、根元にカミキリムシの侵入を許し、腐って倒れます。アカマツより寿命がかなり短いです。しかしながら水分を多く含むので、切ってすぐにパルプ工場に持っていくと良いお金になりますし、トラックにも広葉樹の中でも綺麗に積めるので、効率よく運搬出来ます。これからバイオマス発電等の利用に重要なのかもしれません。成長が良いのが魅力です。

 イタヤカエデはあまり植えません。苗木の調達が難しいです。本来であればミズナラと同じような位置で生えますし、大木になるのは似ております。有用樹なんですがね・・・。

 ブナは天然の植生では見られません。もともと標高が低いので少ないかと思います。階上岳に生えているようですが、市内にはありません。ブナの面白い所は最初、ツバキの様にもしゃもしゃに葉を出します。これは多分、本来日陰で成長するはずが、無理やり日当たりが良い場所に植えてしまったので、幹を守ろうとしている証です。これは庭に生えるカエデ類も近い反応です。ある程度樹冠がしっかりしてくるときちんとした形状になり始めます。最初見た時にはどうなるのか心配でした。失敗した例があるのが、40cmぐらいの苗が来た時には困りました。植えるのが早いのですが、草刈り時には全く見えません。何度も間違って刈りました。後日書きますが草を刈らない作戦にしました。おかげでいつの間にか大きくなり、その時の判断は良かったのだと思いました。木で無い書いて橅ですが、昔は薪以外に使わなかったと聞きます。そして面白いのはブナはボウ芽しないとの事です。他の木は大体若い時に切ると芽が出るのですがね。ブナコの伐採を見ると、高い位置での伐採は芽が出るようです。

 冒頭に書いたイヌエンジュは成長が悪いのと、ここら辺の植生に無いので3年ぐらいで辞めました。上手くいっている場所では、若芽が花が咲いたようで非常に綺麗です。家の床の間に使われたり、木工に使われます。芯材の色と辺材の色の違いが面白いです。また、木へんに鬼と書くのですが、縁起の良い木という扱いになっております。

 カツラは水が流れるような場所では1年で1mぐらいずつ成長します。落葉は綿あめの様な甘い匂いがしてとても好きな木です。もちろん黄葉もきれいです。用材として伐採がしにくい木なので、これから高値になるかと期待しております。しかし、水が少ない場所に植えるとあまり成長しません。なかなか好みのうるさい木でもあります。水が湧き出る所にカツラ有で、市内のいたるところに湧水の場所がありますが、カツラが生える事が多いです。浄法寺の湧水のカツラは見事な大きさです。

 トチノキはほぼ八戸には自生しておりません。これまた渓畔林の重要な樹種で、ほぼ伐採されることが少なくなりました。日陰が好きかというとそうでもなく、明るい場所の方が成長が良い様に思えます。むしろ、日陰に耐える感じです。八戸周辺では打ち身にはトチ水を塗る人がいます。焼酎にトチを漬け込み、メクラブドウやら何やらを混ぜます。効果は凄いあるようですが臭いらしいです。私は塗ったことがありませんので、良く分かりません。

 アオダモはバットの木ですね。苗木屋から苗木あるよと言われて植えてみました。案の定成長が鈍いです。大きくなるとケヤキみたいに見えます。時々伐採するときにやたら固いケヤキだなと思うとアオダモだったりします。残念ながらほとんど太い木が少ない木です。苗木としてもあまり出回っておりません。

 オニクルミは当組合でもあまり植えません。縄文時代の植生の森を作ってみたいと思い調査したことがありました。是川縄文遺跡ではかなり色々な調査が行われており、私の様な木の専門家にも良い情報をもらえます。ちなみに漆で塗った布など出土しております。さて、縄文時代の森は・・・。え、今の雑木林と花粉情報的には変わりません。ようやくかすかにブナの花粉の形跡があります。どちらかと言えばオニグルミの花粉が多いです。そう、三内丸山遺跡は材や食べ物として積極的にクリを植えておりますが、是川遺跡はオニグルミの文化だったようです。私、課長は日本一の太さのオニグルミを2回計測して発表しております。残念ながら1本は強風で倒れましたが・・・。多分、実が大きい物を好んで植えていたのではないかと思います。残っている木はやはり実が大きいです。ちなみにオニグルはユグニンという成分を出すらしく、木の下にはほかの木が生えにくいと言われております。地元的にはトタン屋根が腐りやすいという認知があります。小ネタ的にはクルミの実は珍しく健全であると水に浮きます。おかげで砂浜で木の実を拾えることがあります。

 学術的でなく、ほぼ経験談的なものになりました。色々な失敗もあり、色々やってきたなと後ろを振り返ってしまいました。



















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